尾崎まり江
今回は、妊婦さんの乾燥、それによって起こすと考えられる肌トラブルについて解説していきます。
私のサロンでは、マタニティのお客様も多いのですが、お顔だけでなく体も乾燥している方が多く、妊娠前より多くのオイルが必要となります。それだけ、お肌が乾燥しているということです。
ここでは、妊娠中の乾燥の原因やその対策をお伝えしております。
妊婦さんの肌が乾燥しやすくなる5つの原因
①ホルモンバランスの変化
女性ホルモンには、お肌のうるおいやハリを与えてくれるエストロゲン(卵胞ホルモン)と妊娠を維持するのに欠かせないプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。
プロゲステロンは、月経前になると分泌量が増えるホルモンで、皮脂分泌量が増えたり、便秘やむくみなどの原因にもなります。
妊娠すると、このプロゲステロンの分泌量が増加したままの状態になるという、ホルモンバランスの変化が起こります。
そのため、毛穴が詰まったり、肌がごわつくなどして、肌のターンオーバー周期が乱れる原因にもなり、妊娠前とは肌質にも変化が出始めます。
②つわりや体型の変化による栄養バランスの乱れ
妊娠初期は、つわりで食事が十分摂れなかったり、食事をしても嘔吐してしまう、また、妊娠後期になると、お腹が膨らんできて胃が圧迫されて、食欲が落ちたりすることで、栄養が十分足りない状態になっている場合があります。
赤ちゃんへの栄養も必要なため、お母さんのお肌にまで栄養が行き届かず、肌が乾燥しやすくなります。
③貧血や血行不良
血液は、全身に栄養素や酸素を行き届かせています。妊娠中は、赤ちゃんへの栄養や酸素も血液が運んでいます。そのため、お母さんの血液が不足し、栄養素や酸素が十分行き届かなくなります。妊娠中、貧血になる方も多いのはそのためです。
また、お腹が膨らみ、鼠蹊部(足の付け根)が圧迫されるなどして、血液循環も悪くなる傾向に。そのため、お肌への栄養素が不足して、肌が乾燥しやすくなります。
④妊娠性掻痒(そうよう)症
妊娠中から後期にかけて、妊娠線掻痒(そうよう)症という病気にかかる場合があります。全身に強い痒みが起こりますが、かゆみ以外に症状はなく、出産後には治ります。
ただ、掻きむしるほどの強いかゆみのため、炎症や色素沈着を引き起こす可能性があるので、ひどい場合は、病院を受診しましょう。
⑤体表面の面積の広がり
妊娠すると体重増加に伴い、皮膚が広がります。特に、妊娠後期にかけては、お腹の皮膚が伸ばされるため、表皮が引っ張られて乾燥しやすくなります。
妊婦さんが乾燥することで起こる肌トラブルについて
肌荒れや痒み、敏感肌
肌が乾燥するということは、角質層のバリア機能が低下している状態です。
外部刺激によるダメージも受けやすく、妊娠前より敏感肌になります。敏感肌になることで、肌荒れや痒みなどの肌トラブルも起きやすくなります。
ニキビ
皮脂分泌量を増やすプロゲステロンの分泌量が多くなるため、ニキビができやすくなる人も。これを防ごうと、強い洗浄剤の洗顔料を使うと、乾燥肌を引き起こす原因になるので、ニキビが増えたからといって、洗いすぎは禁物です。
シミ(色素沈着)ができやすくなる
バリア機能が低下している肌は、紫外線によるダメージにも弱くなります。そのため、活性酸素やメラニン色素が過剰に発生して、シミができやすくなります。
また、乾燥や妊娠性掻痒(そうよう)症によって、掻きむしることで色素沈着を起こしやすくなります。
妊娠線ができやすくなる
妊娠中期〜後期にかけて、お腹が大きくなるにつれて皮膚が引っ張られてきます。皮膚が乾燥していると、伸縮性が低下するため、肉割れの状態が起こります。
妊婦さんの乾燥を予防する6つの対策
①こまめな水分補給
体内の水分が不足すると、栄養素や酸素がスムーズに運ばれなくなったり、お肌の水分自体も不足してしまいます。
妊娠中のむくみが気になる方も多いと思いますが、水分を控えると余計にむくみを悪化させてしまいます。妊娠中は、こまめな水分補給を心がけて、体の内側からも潤わせましょう。
②鉄分の多い食材を摂取
鉄分不足に陥りやすい妊娠中は、鉄分の多い食材を積極的に摂取しましょう。病院で鉄剤を処方される場合もありますが、気分が悪くなるという副作用を起こす方もいます。できれば、自然な食材で鉄分補給ができるように、食事内容を考えてみてください。
血液を増やすのにおすすめ食材
海藻類(わかめ、もずく、ひじき、あおさなど)、ナツメ、レバー、ナッツ など
③天然素材の衣服を着用
体全体が乾燥しているということは、全身の皮膚のバリア機能も低下しています。そのため、下着や衣服の摩擦も肌へのダメージとなり、肌荒れや痒みを引き起こす原因となります。
化学繊維などの肌に負担となる繊維を避け、綿やシルクなどの天然素材の下着や衣服を着用するようにしましょう。
④お風呂上がりは水分をきちんと拭き取る
肌に水分が残った状態だと、その水分が蒸発するときに、お肌の水分までいっしょに蒸発されます。
濡れたままの状態で、素早くボディクリームを塗って潤いを閉じ込めるか、水分が残らないように拭き取りましょう。
⑤適度な運動
妊娠安定期に入ったら、血行促進のためにも適度な運動も取り入れましょう。お散歩程度に歩いたり、YouTubeなどで、妊娠中のヨガやストレッチ方法も動画がたくさんあるので、チェックしてみましょう。
ただし、安静が必要とされている妊婦さんは、担当医の指示に従ってください。
⑥ボディクリームや顔用保湿クリームで保湿ケア
お肌に合ったボディクリームや保湿クリームで、しっかり保湿ケアを行いましょう。特に、お腹は妊娠線予防にもなるため、保湿対策は必須です。
妊娠中に使うボディクリーム・保湿クリームの選び方
乾燥した肌のバリア機能が低下している肌におすすめの保湿成分が「セラミド」です。
特に、敏感になっている肌には、人と同じ構造をした「ヒト型セラミド」が配合されたクリームがおすすめです。
逆に、パラベンやアルコール(エタノール)は、肌への刺激を感じる場合があるため、敏感になっている時の妊娠中は避けた方がいい成分です。
また、経皮毒と言って、皮膚から吸収された成分は、血液に入って、全身に巡ります。血液によって、栄養素や酸素が胎児に運ばれるということは、よくない成分も運ばれるということ。妊娠中は、無添加処方など、シンプルな成分内容のクリームを選ぶようにしましょう。
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日焼け止めは必須
バリア機能が低下している肌は、紫外線によるダメージも受けやすいため、紫外線対策は必須です。最近は、パソコンやスマホから発せられるブルーライトによるダメージもあるので、外出しなくても、ブルーライトカット効果のある化粧下地やファンデーションを使うことをおすすめします。
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まとめ
今回は、妊婦さんの乾燥について原因や対策を解説してきました。
女性ホルモンバランスの変化は、お肌だけでなく、髪の毛や心にもさまざまな影響を及ぼします。少しでもストレスを減らし、快適なマタニティライフを送れるよう、参考にしていただけたら幸いです。
私のサロンで行っているマタニティケアは、アロマオイルを使って全身のトリートメントを行っています。お腹が大きくなるにつれて、足のケアまでできないという妊婦さんもおられます。
お近くにマタニティケアをしてくれるサロンがありましたら、そうしたサロンを利用してみるのもおすすめです。
また、パートナーにお願いしてボディクリームやオイルを塗ってもらいましょう。