今回のテーマは「睡眠」です。その日の気分や仕事の効率を左右する「睡眠」は、私たち人間にとって欠かせないものです。
朝の目覚めが悪い、寝ても寝ても眠いという方は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事はこんなあなたにおすすめ!
- 夜型生活に偏っている自覚のある
- 最近目覚めがよくないと感じている
- 最近ふとんに入ってもなかなか寝付けないと感じている
- 睡眠ってどんな役割があるの?と疑問に思っている
このような「睡眠」に関するお悩みはありませんか?ここでは、「睡眠健康指導士」資格を持っている私から提言いたします。
睡眠について
まずは、睡眠や体内時計の仕組みなどについて解説していきます。
睡眠の種類
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2つがあります。
前者のレム睡眠は動睡眠といわれ、だらりと力が抜けるように体の動きはありませんが、眼球が動く急速眼球運動(Rapid Eye Movement :REM)がみられます。このレム睡眠は大脳機能を発達させたり、疲労した大脳を休息させたり修復する機能があり、脳を創る、育てるという大事な役割があります。
画像引用元:日本医師会ホームページ
このレム睡眠時間は新生児では総睡眠時間の約半分を占めており、小児期以降は20%ほどとなり、高齢者だと15%程度となります。
睡眠はまず深い睡眠であるノンレム睡眠から始まり、この入眠時のノンレム睡眠で成長ホルモン分泌や肌の修復をおこないます。
その後、浅い睡眠に移りレム睡眠にはいります。この周期を一晩中に4~5回繰り返しています。一晩の睡眠経過は年齢とともに変化していきます。高齢者になると深い睡眠の程度が減り、レム睡眠も減ります。
そのため中途覚醒が多くなります。
睡眠メカニズム
睡眠は「恒常性機構」と「体内時計機構」から成り立っています。前者は疲れたから寝るという機構で、後者は夜になると眠くなるという機構です。この2つの機構が関連しながら睡眠の量・質を制御しています。
体内時計の仕組み
視床下部にある「視交叉上核」が体内時計の働きをしています。起床後、太陽から光が目に入ると体内時計に伝達され、体内時計を合わせることになります。この12~13時間は代謝が高まり血圧、脈拍は高めに保持され活動時間となります。
朝のひかりを浴びて14~16時間くらい経過すると、脳の松果体から「メラトニン」という物質が分泌され、手足の末梢から放熱が始まり、身体内部や脳の温度が低下し始め、自然な眠気が生じることとなります。
そのため、朝十分に光を浴びないと適切に体内時計がリセットされないため、眠る態勢に入れません。
また夕方や夜間に強い光をあびるとメラトニン分泌が抑制されてしまい、眠りの準備ができなくなってしまいます。朝の光、日中の明るい環境と夜の暗い環境は睡眠には大切な役割を担っています。
このメラトニンには、催眠作用だけではなく老化防止、抗ガン作用もあるため分泌不十分だとこうした作用が発揮されません。
睡眠中に分泌されるホルモン
①成長ホルモン
寝入りばなのノンレム睡眠時に主に分泌されます。発育期の子供には身体の成長に、成人には組織の修復、疲労回復に役立っています。
②メラトニン
朝の光をあび14~16時間後に分泌され眠りの準備をもたらします。朝の光が不十分であったり夜にも明るい環境にさらされていると寝つきを悪くする原因となります。
眠りと目覚め
眠りにつく4時間ほど前から指先の皮膚温は上昇し、体の内部の温度(深部体温、脳温)は低下し始めます。その後、睡眠の経過とともに深部体温は下降をし続け、目覚めの2~3時間前頃に最低値になり、その後やがて上昇し覚醒の準備に入ります。
そのため眠る前に手足を温めると入眠しやすくなります。
眠気のリズムと体温変化
眠気は午後2~4時、午前2~4時にピークを迎えます。これに対して、体温は日中から上昇し、午後7~8時頃ピークに、その後入眠に向けて低下し、目覚めの2~3時間前に最低になります。
それから、しだいに上昇し覚醒を迎えます。このような毎日同じリズムの活動周期が不規則になってしまうと眠れなくなってしまいます。
睡眠の質が悪いままだとこんな悪影響が…
眠気と交通事故
前述した眠気のピーク時間に交通事故や作業ミスの発生は多くなることがわかっています。
睡眠時間と生活習慣病
この50年で日本での生活スタイルは大きく変遷し睡眠時間は年々減っています。NHKの「国民生活時間調査」によると1960年では60%をけていましたが2015年では20%台まで低下しています。睡眠時間も1960年では平均8時間13分であったのが、2010年には7時間14分と約60分減少しています。世界の先進国と比較しても最も短い群に入ります。
就業スタイルの夜型の増加、夜間照明の増加などが原因であると考えられます。
睡眠不足や質の悪い睡眠からは、不眠症、うつ病、前立腺がんや乳がんの発生率の増加、高血圧、認知症、肥満のリスクの関与がすでに明らかになってきています。
睡眠の役割における重要ポイント
①脳は新生児で400gほど、小児期に急成長をとげ4~5歳で1200gとなり、この時期までに9割は決まるといわれておりこの時期によく寝ることは非常に大切です。
②睡眠は記憶強化・促進の大切な役割があります。そのため睡眠時間の短い子供の学力低下は明らかなデータがあります。成人でも睡眠で脳の「掃除」をするため将来の認知症発生を予防する効果があります。
③睡眠時間は基礎代謝、肥満に影響します。睡眠不足になると食欲を抑制するレプチンというホルモンが不十分となり満腹中枢を不安定にさせてしまうからです。
④死亡率は睡眠時間が7時間前後の場合最も低下しているデータがあります。
⑤推奨される睡眠時間は児童9~11時間、思春期8~10時間、青年や中年7~9時間、高齢者7~8時間といわれています。
睡眠の質の悪い人の特徴とは?
- いびきをよくかく
- 無呼吸がある
- 中途覚醒、入眠障害
- 日中に過度の眠気がある
- 集中力や活力がない
- 成績が悪い
- 肥満体型
- 昼夜逆転
などがあります。
睡眠の質を高める7つの方法
よりよい睡眠をとるためにどうすればいい?とお悩みの方のために、睡眠の質を高める方法を7つ紹介いたしますね。
質の高い睡眠をとるための基本は、規則正しく睡眠をとり、朝の光でリセットすることです。
①部屋の明かりを暗くする。夜遅くまで高照度の環境をつくらないことです。上述したようにメラトニン分泌を妨げないように、また精神の鎮静化をはかるためです。特に蛍光灯の光には青い波長が多くメラトニン分泌抑制作用を強くしてしまうため、夜間は赤色の電球がよいとされています。
②深夜のテレビやスマートフォンの操作も同様です。入眠障害、中途覚醒の原因となってしまうので使用は控えるか午後9時以降は操作しないことがおすすめです。
③アルコール、カフェインについても入眠促進作用がある場合がありますが、睡眠後半は睡眠が浅くなりやすいため早朝覚醒、中途覚醒をおこします。睡眠前には摂取は控えることが大切です。
④朝食をしっかりとることが大事です。朝食でたんぱく質を摂取すると、セロトニンを合成し、日中活動的にし、暗くなるとセロトニンはメラチニンの合成を促進し、睡眠に導きます。
⑤遮光カーテンは少しあけておくと朝の光を浴びやすく自然覚醒をしやすくなります。
⑥短い昼寝は有効です。ただし寝すぎると夜間の睡眠欲求が低下してしまうので注意です。
⑦ニコチンの摂取は覚醒反応をもたらすため睡眠1~2時間前からは摂取を控えるとよいでしょう。
睡眠の病気について
睡眠の病気もありますので、もし気になることがありましたら、専門医にご相談されることをおすすめいたします。
最も多いのは「不眠障害」であり、入眠障害、中途覚醒、早期覚醒、熟睡感の欠如があります。
続いて、睡眠関連呼吸障害に含まれる「睡眠時無呼吸症候群」や、過眠症に含まれる「睡眠不足症候群」や「ナルコレプシー」、睡眠関連運動障害に含まれる「むずむず足症候群」や「周期性四肢運動障害」、そのほか子供の夜驚、歯ぎしり、夢遊病などがあります。
まとめ
最近よく眠れていますか?
眠りの異常により起こる事故、作業ミス、病気の発生による就業不可などで発生する日本の経済損失は年間15兆円であるといわれています。
睡眠健康の知識を学び、もう一度自身の睡眠を振り返ってみませんか!
私たちは疲れたから眠るだけではなく、明日の活動をよりよくするための脳神経の再構築、メンテナンスを自然にしているのです。ところが現代の日本は224時間社会となり、昼夜の区別がはっきりつかなくなり、騒音、光、夜勤など睡眠時間を十分にとらない、あるいは質の悪い睡眠を繰り返している人が少なくありません。
人は16時間以上覚醒していると脳機能は低下し正常な活動ができなくなるのです。疲労した脳を休めるだけではなく、修復・回復させる機能が睡眠なのです。
睡眠は休息だけではなく脳を創り、よりよく活動させるのです。そして前述したように各種ホルモンを分泌し体内環境を整備しているのです。睡眠の重要性が理解いただけたかと思います。