この記事はこんなあなたにおすすめ!
- 知人に子宮頸がんといわれた人がいて自分も気になっている方
- 子宮頸がんにはどのような症状があるか知りたい方
- 子宮頸がん検診はどのように受診したらよいか知りたい方
- 子宮頸がんワクチンについて学びたい方
- 20代~40代の若い女性の方
まず「子宮頸がんとは」
子宮頸がんとは、子宮の入り口に発生するがんで、婦人科がんでは最も頻度が多い「がん」のひとつです。
特記すべきは、罹患する年代が20歳代から40歳代と若年女性が多いということです。また前がん病変ともいえる「異形成」という段階を含めると患者数はさらにのぼることになります。
世界では子宮頸がんの罹患は減少、撲滅の一途をたどっている中で、残されるように日本では、いまだ増加傾向にあります。原因にヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus :HPV)の感染が関与していることがすでに明らかになっています。
画像引用元:日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/
上表は子宮頸がんの自然史です。自然治癒率(消失率)は、CIN1で60%、CIN2で40%、CIN3で20%ほどといわれています。性交によりHPVに感染することがほとんどであるため、ほとんどの女性が一度はHPVの感染を受けているのですが、その多くは自然に消失していくため罹患しません。
感染が持続すればするだけ消失率が低下してしまうため、喫煙、過度のストレス、ステロイド剤を使用した治療歴など免疫低下に影響する背景がある場合はより注意が必要です。
子宮頸がん検診
産婦人科医院、健康診断をおこなっている医療機関で受けることができます。予約制の場合もあるため確認をしてみましょう。
子宮頸がんの一次検診は、細胞診と呼ばれる方法でおこなわれます。子宮の入り口である子宮頸部をブラシやへらで擦って細胞をとってきます。
一般的には、細胞診で異常が見つかった場合、二次検診としてコルポスコピー診という検査をおこなうことなります。この検査は子宮頸部を酢酸で染色したうえで、拡大して観察をします。
病変と思われる部位を数ミリほど切除して精密検査をする組織診(生検)をおこないます。すなわち細胞診でスクリーニングをし、組織診で診断を確定するということになります。前がん病変である異形成の段階では自覚する症状はほとんどなく、こうした検診ではじめて見つかることが多いので、定期的な子宮頸がんの検診を受けることをおすすめいたします。
いままでに異常がなかった場合は2年に1回を、また、過去に検診で異常があった場合は、数か月おきに検査を受ける必要があるため主治医の指示に従うことを推奨します。
性交経験のない場合は、子宮頸がんへのリスクがほとんどないため、一般的には性交経験のある女性が検診対象者となりますので、子宮頸がん検診をおこなっている医療機関でご確認ください。
費用は一般的に、自治体補助により1,000円程度であることがほとんどです。また過去に異常があった場合の再検査は保険扱いとなる場合がありますので、確認してください。
子宮頸がんの症状
子宮頸がんは、前述したように異形成や子宮頸がんの初期では自覚症状に乏しく、検診で初めて発見されることがほとんどです。
進行するにしたがって月経と関係なく不正出血があったり、性交時に多く出血が伴ったり、異臭をともなう帯下が増加したり、下腹部痛などの症状があったりします。
子宮頸部異形成について
いわゆる「がん」ではありませんが、前がん病変と言われる段階です。別名子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia:CIN)とも呼ばれます。
子宮頸部異形成はその程度により軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類があります。
子宮頸部内に病変がとどまった状態です。さらには、微小浸潤がん、浸潤がんと段階的に進展することがわかっています。どの段階で発見されるかによっては治療方法が変わっています。なかには子宮頸がん検診を契機に発見されることも少なくないため、定期的な子宮がん検診を受けておきましょう。
HPVについて
上述したように子宮頸部異形成ならびに子宮頸がんの主たる原因は、ヒトパピローマウイルスの持続感染です。HPVには100種以上が存在しますが、うち子宮頸部異形成や子宮頸がんに関与するものは約30種あるといわれています。そのなかにもハイリスク群とそれ以外が存在します。
ほとんどがHPVへの感染は性交渉によるものです。ほとんどの女性が一度は感染を受けると考えられます。しかし、多くの場合はHPVに感染しても自然消失してしまいますが、HPVに持続感染をしてしまうと数年~10年以上を経て子宮頸がんへと進展するといわれています。
HPVの型とガン化リスク
リスク | HPVの型 |
---|---|
なし | 6 11 42 43 44 53 54 70 |
少しあり | 35 56 61 66 67 68 80 90 92 93 UN |
あり | 31 33 39 45 51 52 58 59 82 |
危険 | 16 18(感染部位をガン化させる) |
HPVは子宮頸がんだけではなく、外陰部がん、中咽頭がん、肛門がんなどにも関与しているといわれていますが、上表は特に子宮頸がんと関わりがあるHPVの型です。
性交渉を開始すると考えられる10代~20代で初感染を生ずる可能性が高く、数年~10年以上をかけて子宮頸がんへと進行しているようです。
またHPV感染は異形成から上皮内癌、浸潤がんと病変の進行に伴って検出頻度も高くなります。特にハイリスク群16 18への感染は注意が必要です。
最近は子宮頸がん検診の際に細胞診だけではなく、HPV感染についても検査を併用することが多くなってきました。欧米では細胞診ではなく、HPV感染の有無が検診項目になっている国もあるほどです。日本ではHPV検査単独はおこなわれませんが、同時に併用できるため子宮頸がん検診を受診する際に医療機関で確認しておきましょう。
子宮頸がん予防ワクチンについて
HPV感染を予防することにより子宮頸がんの発症を防ぐHPVワクチンが開発され、世界の70か国以上で国のプログラムとして接種がおこなわれています。
現行のHPVワクチンにより子宮頸がんの70%ほどを予防できると考えられており、性交渉を経験すると考えられる以前の10歳代で接種することをWHOは推奨しています。ワクチン接種をすることでHPV感染率や前がん病変の頻度が非接種の場合と比べ減少していることが明らかになっています。
世界各国ではワクチン接種が進み子宮頸がんは減少、あるいは近い将来撲滅すると考えられるほどになっている一方で、日本では2013年4月より定期接種となっていましたが、ワクチン接種後のさまざまな症状が報告されたということで、積極的なワクチン接種の勧奨は控えられてしまいました。
その後、報告された多様な症状は子宮頸がんワクチンとの因果関係は証明されず、否定されましたが、国としてワクチン接種の積極的勧奨の再公表がいまだになされず、残念ながら子宮頸がんの罹患者、死亡者数はまだまだ増加してしまっているのが現状です。
なお、ここで誤解してはいけないのが、ワクチンはHPV感染を予防する効果はありますが、すでに存在する異形成や子宮頸がんを治療するものではありませんということです。
これについてはしっかり覚えておきましょう。
子宮頸部異形成に対する対応
CIN1やCIN2の場合は、定期的な検査をしながら、経過観察されることがほとんどです。陰性化や自然治癒をすることがあるからです。
しかし、CIN3やCIN2が長期にわたり消失されない場合は治療を行います。代表的な手術方法として子宮頸部円錐切除術という方法です。子宮頸部を長径2cmほど円錐状に切除するものです。
すなわち、子宮は温存できるということです。
しかし、頸部を切除したことで、頸管粘液が減少し、不妊の原因となったり、頸部短縮により、切迫早産の原因、あるいは頸管が癒着してしまうことで子宮内の月経血が排出されない月経モリミナという病態を起こす可能性があるため、手術を受けることとなった際には、しっかりと主治医とリスクについても相談してください。
また閉経前後や閉経以降の患者さんの場合、年齢にともなう子宮萎縮により子宮頸部がはっきりとしないため細胞診までは可能でも生検が困難となってしまう場合があります。その場合は治療としてではなく、診断を目的として、子宮頸部円錐切除術をおこないます。そのほかには異形成の場合であれば病変部をレーザーで焼灼するだけの治療法もあります。
子宮頸がん進行例の治療について
子宮頸がんの診断をうけたのち子宮内で病変がとどまっているか、あるいは子宮以外に病変が広がっていないか確認をし、病期を決定していきます。
MRI検査、CT検査などおこない、膀胱や直腸、膣など子宮周囲や骨盤壁などどこまで病変が存在するのか診断します。病期により治療方法が異なってくるためです。
病期に関して下図を参照してください。
画像引用元:http://www/saiseikai/or/jp/medical/
①Ⅰ~Ⅱ期の治療
広汎子宮全摘術とよばれる根治術をおこないます。子宮のほかに、膣の一部、卵巣、子宮周辺の組織やリンパ節を摘出します。将来妊娠できるようにしたいという希望が強い場合は子宮頸部とその周囲の身を広範囲に切除し子宮体部は温存するようにする場合もあります。
なお手術の後遺症として、排尿感覚が鈍くなる排尿障害や下肢のリンパ浮腫、卵巣摘出によるホルモン欠落症状などがあります。
②Ⅲ~Ⅳ期の治療
上記でも手術療法を選択しなかった場合も同様ですが放射線単独療法、抗がん剤点滴と放射線治療併用があります。
放射線治療の副作用としては胃腸障害、下痢、皮膚炎、腸閉塞などがあります。また抗がん剤治療(化学療法)における副作用としては嘔気、貧血、血小板減少、好中球減少、腎毒性などがあります。いずれも患者さんの年齢、体形、体力によりあわせて考慮されます。
子宮頸がんの再発率について
治療後2年までの再発が多く、再発する場所としては子宮摘出後であっても局所(子宮の元あったところ)が一番多く約1/4を占めます。
放射線治療などで子宮が残っている例では、子宮頚部、膣壁、傍子宮組織(子宮周囲の組織)を含めると、局所再発は76%、肺や肝臓など遠く離れた臓器への遠隔転移が16%です。
子宮頸がんの再発に対しては、主として、化学療法と放射線療法が選択されます。手術療法は転移病巣が孤立性で限局している場合に行われることもありますが、適応となる例は多くありません。再発に対する標準的な治療法はなく、個々の状態に合わせて検討した後、患者さん本人およびご家族の方々と相談の上、治療法を決定していきます。
子宮頸がんの治療費用について
自己負担額としては一般的にはⅠ~Ⅱ期では70万円、Ⅲ期90万円、Ⅳ期では100万円以上とされています。ただし入院期間は医療機関によって異なります。また加入する保険や高額医療申請など個々によっても背景が異なるため、入院前にしっかりと確認が必要です。
子宮頸がんの遺伝について
『がん』と聞くと、身近な家族や親戚にがんになった人がいるとなりやすいというイメージがありますが、子宮頸がんは遺伝などに関係なく、性交経験がある女性なら誰でもなる可能性のある病気です。
近年では20代後半から30代に急増、若い女性の発症率が増加傾向にあります。子宮頸がんは、がんによる死亡原因の第3位、女性特有のがんの中では乳がんに次いで第2位を占めており、特に20代から30代の女性においては、発症するすべてのがんの中で第1位となっています。日本では年15,000人(上皮内がんを含む)が子宮頸がんと診断され、2,500人ほどが死亡しています。
妊娠中に子宮頸がんの指摘をされた場合
上皮内がんである0期は分娩後に子宮頸部円錐切除術を、Ⅰ期は妊娠中でも診断確定のために子宮円錐切除術をおこないます。Ⅱ期以降では胎児娩出後に標準治療をおこなうことが推奨されているため、胎児が体外生存可能な時期か否かで主治医としっかり相談が必要となります。
まとめ
子宮頸がんのリスクを高める要因とは、
- 性交の経験がある
- タバコを吸う
- 子宮頸がん検診を受けたことがない
- 妊娠・出産の経験がある
- クラミジアに感染したことがある
- 経口避妊薬を5年以上内服している
- 免疫抑制剤を使用している
- 子宮頸がん予防ワクチンを摂取していない
参考資料;宝島社「女医100人に聞いた!女性の病気が分かる本」より
上記に該当する場合は特に、該当しないかたでも上述したように子宮頸がんはまず検診でしか発見されないといっても過言ではないでしょう。
日本ではまだまだ子宮頸がんは増加傾向にある疾患です。しかも子育て世代や働き盛りの世代を中心とした若年女性が多く関与しています。
日本における子宮がん検診の受診率は平均20%程度とまだまだ低いのが実状です。仕事があって行けない、子供がいるから行けない、面倒くさい、痛いから行きたくない、など理由は様々ですが症状があったときには進行してしまっているかもしれません。早期発見ができれば子宮も温存できます。子宮頸がん検診は非常に重要です。
ここで子宮頸がんについて学んでいただいたかたにはぜひ定期的に子宮頸がん検診をうけることの大切さを知っていただいたと思いますので、しっかり「がん」から体を守っていきましょう。