今回ご紹介するのは、自分の本来持つお肌のポテンシャルを上げる、ちょっとしたテクニックとルールがぎっしり詰まったお肌の入門書編です。美肌を知るためにはまずお肌について知ること。
この記事の監修にご協力いただいたドクター
私のクリニック目白 院長 平田 雅子先生
1960年生まれ
医学博士、皮膚科認定専門医、日本医師会産業医、国際中医薬膳師
日本大学医学部卒業
東京医科大学付属病院勤務
東京医科大学付属八王子医療センター助手
同大学助手を退職後、女性専門医療に携わる。臨床の第一線に立ち、毎日500名以上の患者様の診療にあたる。
2003年、医療法人社団 育生会 私のクリニック目白 開設 理事長兼院長
皮膚を通して全身を診る女性のためのクリニック。ただ薬を出すだけではなく、食事や生活面のアドバイス、再生医療、美容治療など、元気で美しくなるために、患者様の健康生活をデザインするクリニックです。よくお話を伺って診察いたします。
医療法人社団 育生会 私のクリニック目白
〒171-0031 東京都豊島区目白1-4-1 JR東日本ホテルメッツ目白1階/JR山手線 目白駅 徒歩1分
Tel: 03-5992-5550 電話受付時間:10:30-19:00 休診日:火・日祝
https://www.watashino.jp
この記事はこんなあなたにおすすめ!
- そもそも“肌”ってなに?
- なんのために皮膚ってあるの?
- どんな働きをしているの?
ここでは、本気で美容を学びたい方だけではなく、「きれいになりたい!」「化粧品が好き!」といった全ての女性のために、お肌とあなた自身がもっと美しく輝けるよう分かりやすく解説します。
3つの層で構成されるお肌の構造
“肌”とは皮膚の一番上、つまり目に見える部分を言います。それに対して、“皮膚”は大きくは、“肌”と同義として扱われていますが、体全体を覆っている組織のことを言い、その組織は大きく3つで形成されています。
- 最も目に見える一番上の組織を【表皮(ひょうひ)】
- 表皮のすぐ下にある組織を【真皮(しんぴ)】
- 真皮の下で最も奥に位置している組織を【皮下組織(ひかそしき)】
実はこの“肌”も臓器のひとつで、直接外界に触れる最も面積の大きな臓器です。
皮膚の面積は一般的な成人で約1.6㎡、厚さ約0.6~3.0㎜(3つの層全て含む)、重量は体重の約16%と言われています。※引用元:コスメの教科書 第2版 P052参照
この外気に触れる唯一の臓器は有害物質の侵入を防ぎ、体温を一定に保つ機能があり、人体を守ってくれています。私たちが生存するためになくてはならない組織なのです。
・「表皮」の特徴と働き
肉眼で確認できて最も表面化しているものが【表皮(ひょうひ)】です。
約0.2㎜※の厚みがあり、保護壁として外界から直接受ける外的刺激を人体に伝えない、侵入させない役割を持っています。※美容皮膚科学辞典 P4参
【表皮】は、さらに4つの段階層から構成されています。
【角質層(かくしつそう)】
これは化粧品のCMや広告物でもよく目にする細胞の1つではないでしょうか。
【顆粒層(かりゅうそう)】
この部分は皮膚の細胞分裂“ターンオーバー”により角質層へ押し上げられる細胞です。
【有棘層(ゆうきょくそう)】
体内で輸送された酸素や栄養素を受け取る機能があります。
【基底層(きていそう)】
皆さん意識高くお持ちの“メラノサイト”が存在している部分です。
大きくは、この4つの層で【表皮】は成り立っていますが、実は角質層の最上層に大切な役割を持つ【皮脂膜(ひしまく)】が存在します。
皮脂と汗が混じり合ってできているこの【皮脂膜】はわずか0.5μ(ミクロン)※1と言われており、皮膚が本来持っている常在菌と共にお肌のバリア機能を高めています。※1:オーガニック化粧品のピュアノーブル Webサイト参照
※画像引用元:CELLA COSMETICS
人の肌が本来持つ天然保湿成分で構成されているため、最も自分に合った美容クリームと言えるでしょう。
《お肌を守る【角質層】はストイックなヒーロー!》
角質層は、肌表面に位置し“角質細胞”という細胞が10~20層※2にも重なっています。※2コスメの教科書 第2版 P056参照
この角質層の中には、天然保湿因子のNMFや細胞間脂質が存在し、その働きで皮膚を乾燥から守り、肌の水分蒸発を防ぐ役割を持ちます。
この細胞間脂質は、水分と油から構成されている“リン脂質”が、まるでミルフィーユのように約1,500層※3にも折り重なっているとおり、それを“ラメラ構造”と言います。
※3参照・画像引用元:BeautyMission Webサイト参照
このラメラ構造がきちんと美しく整列されていると、しっとりと潤った艶のある美しい肌状態を保ちます。
常に外的刺激から晒されているにも関わらず、強くひたむきに肌内部を守る【角質層】はお肌のヒーローなのです。
《入ってきた外的要素を跳ね返そうとする【顆粒層】が肌環境をパトロール》
顆粒層は、扁平な形をした細胞から構成されており、この細胞はターンオーバーにより角質層へ持ち上げられ変化。
その過程で“ケラトヒアリン”という顆粒が出現し、角質層を通過して侵入してきた紫外線などを跳ね返します。
実は私たちが知らないところで、きちんと見回りをして悪い要素をやっつけている、お肌の警察官のような存在です。
先ほど出てきました、角質層の天然保湿因子NMFの元となるアミノ酸は、この顆粒層で構成するたんぱく質が角質層で分解されたものです。よって天然保湿因子の元はこの場所で日々生産されているんですね。
《重要なセンサー【有棘層】ってすごい!》
表皮の中でも最も厚い層の【有棘層】。ここにはリンパが流れていて、知覚の神経も存在します。
この有棘層のすごいところは、“ランゲルハンス細胞”という免疫細胞があり、顆粒層も通過してしまった異物の混入を発見すると、リンパ節に伝達し被害を取り除こうとするところ。
この反応が“アレルギー反応”です。
アレルギー反応は出てしまうと辛いものですが、生体としては守ろうとしている正常な現象です。
※画像引用元:ウィキペディア
ただし残念なことに、年齢と共にランゲルハンス細胞は数の減少が見られると言われ、こういった情報伝達機能が滞ると、異物混入を許し皮膚や体内の健康が損なわれることになってしまいます。
人体がもともと持つメディカルな機能なのです。
《【基底層】はメラニンの貯蔵庫だった!》
表皮の一番下にある【基底層】は、どんどん新しい角化細胞を生み出す働き者。
皆さんご存知のメラノサイトはここに位置し、メラニンを合成します。メラノサイトとは別名「色素形成細胞」と言い、【基底層】の細胞の間に点在しています。
メラノサイトの中には“メラノソーム”という袋があり、その袋の中でメラニンは作られていきます。
※画像引用元:花王㈱ スキンケアナビ
このメラニンが黒く肌表面に浮き出てくるのが、美の大敵“しみ”です。紫外線などの刺激を受けると「メラニンを作れ!」という指令をメラノサイトへ伝達。
伝達されるとメラノサイト内で酵素チロシナーゼを活性化し、アミノ酸のチロシンをドーパキノンへと酸化。ドーパキノンはどんどん酸化が進み、メラニンへと変化します。
こうしてみると「メラニンってなんて悪い奴らなの!」と感じてしまうのですが…。
実はメラニンは、有害な紫外線から私たちの外界に晒されているお肌自体を守ってくれているがゆえに発生します。この事象は、紫外線へ立ち向かう私たち人間の体が持つ防御反応なのです。
有害な物質が皮膚内部まで浸食しないよう、基底層で紫外線を遮断するべく黒い色素のメラニンを生成しているのです。このメラニンがあるからこそ、生体は日々健康に活動できているわけです。
・「真皮層」の特徴と働き
真皮層は、肌の弾力とハリを保つ役割を持ち、約70%がコラーゲン繊維で占めています。※1引用元:コスメの教科書 第2版 P062参照
そして、そのコラーゲンをしっかりと、はしごのように支えている足場になっているのがエラスチン繊維と言い、コラーゲン繊維とエラスチン繊維の足場を埋めているのがヒアルロン酸などのゼリー状物質になります。
このコラーゲン繊維、エラスチン繊維、ヒアルロン酸などの構成成分を生み出しているのが“線維芽細胞(せんいがさいぼう)”と言います。
この【真皮層】は、上側(つまり表皮側)にある【乳頭層(にゅうとうそう)】と、そのすぐ下にある【網状層(もうじょうそう)】の2つの層で成り立っています。
さらに厳密に言いますと、乳頭層と表皮の最も下(基底層)は、【基底膜(きていまく)】というわずか0.1㎛(マイクロメートル)※2の薄くて繊細な膜で接着されており、ターンオーバーの情報伝達をしたり、表皮と真皮の間の栄養物や老廃物の仕分けと移動を行う大切な働きをしています。※2引用元:コスメの教科書第2版 P061参照
しかし、この基底膜は年齢とともに変化していきます。若く弾力のある肌は、しっかりとした曲線で表面積が大きく伸縮性が高いですが、老化が進むと扁平になり弾力が失われます。
《真面目な働き者【乳頭層】は栄養と酸素を供給するポンプ》
毛細血管やリンパ管、神経などが通っている乳頭層。凸凹と波打った形状をしている境界域です。この凸凹が年齢を重ねると扁平に変化し、表面積が減少するため、表皮への酸素や栄養供給が滞りがちになります。
表皮の基底細胞に栄養を与えており、ここにもコラーゲン繊維とエラスチン繊維が存在しています。
画像引用元:メディカルノート「「皮膚の悪性腫瘍」とは? 診断から治療までの流れを解説」
《タンパク質工場の【網状層】》
網状層は、【乳頭層】よりも厚く、真皮の大部分を占める層です。皮膚の強度、伸びやすさ、弾力性に直結しています。
この部分に存在している“線維芽細胞”が、皮膚の重要な構成成分であるタンパク質を作っていて、この繊維の大部分はコラーゲン繊維です。
網目状に整列したかのように並んでいることから【網状層】とよばれています。
【真皮】の層は大きくは、乳頭層と網状層、この2つで構成されています。
細かく解説すると、乳頭層と網状層は基質からできており、その中にはコラーゲン繊維・エラスチン繊維・繊維芽細胞が存在しています。但し、乳頭層にはコラーゲン繊維・エラスチン繊維・繊維芽細胞はあったりなかったりします
では、【基質(きしつ)】【コラーゲン繊維】【エラスチン繊維】【線維芽細胞(せんいがさいぼう)】について、さらに詳しく解説していきましょう。
・基質(きしつ)
【基質】は、主にヒアルロン酸やプロテオグリカンなどといったゼリー状の物質でできており、皮膚にハリや弾力をもたらします。
ヒアルロン酸は、たった1gで約6リットルの水分を保持できる能力があるため、地肌が持つ潤いを貯水する役割も担っています。※コスメの教科書第2版 P063
画像引用元:銀座小町クリニック
美容施術でよくヒアルロン酸のワードを聞くのも納得ですね!
・コラーゲン繊維
【コラーゲン繊維】は皆さんも聞いたことがあるかと思います。化粧品成分でもよく配合されていますよね。
本来ヒトに備わっている天然繊維なので親和性が高いと言われ、外的な衝撃から守ると同時に、皮膚に柔軟性の高い弾力を与えています。しかし、加齢や紫外線の影響で衰えることが分かっています。
画像引用元:ニッピコラーゲン
・エラスチン繊維
【エラスチン繊維】はコラーゲンを支えるはしごです。
コラーゲンがいくつもあって、充実していたとしても、エラスチンがなければなんの意味も持ちません。
ゴムのように伸び縮みする性質を持ち、【真皮】以外にも血管や靭帯など、弾力性や伸縮性が必要な組織に存在しています。
体全体のエラスチン量に対して【真皮】には約5%含有されている※4と言われています。※4引用元:わかさの秘密参照
※画像引用元:わかさの秘密
・線維芽細胞
【線維芽細胞】は【真皮】のところどころにあって、先にも述べたコラーゲン繊維やエラスチン繊維を生み出しています。生み出すだけでなく、古い繊維を分解までしてくれます。
これらの素晴らしい能力を最大限発揮するには、血液からの栄養供給が充分であることが必要なのです。また、その栄養供給は外界から受ける影響によって大きく乱れることがあります。
ここまでお読みいただくと、なんとなく『コラーゲンの減少が“しわ”や“たるみ”の要因になっているのかなぁ?』と感じられているのではないでしょうか。
お肌のハリや弾力は真皮が司ってると言っても過言ではありません。
若いころは線維芽細胞が順調に機能し、コラーゲン繊維やエラスチン繊維、ヒアルロン酸、プロテオグリカン等のムコ多糖体が活発に生まれ続けてくれていますが、加齢とともに線維芽細胞が減少し、機能が劣れることハリや弾力が失われていきます。
ただし起因している要素はこれだけではありません。
紫外線やお肌の酸化、糖化などの影響でもこの大切な繊維やムコ多糖体は変性していき、“しわ”や“たるみ”が一気に加速していくことがあるのです。
上村
・「皮下組織」の特徴と働き
これまでに述べた【表皮】【真皮】を支える“皮膚”としての最後の組織、【皮下組織】について学んでいきましょう。
画像引用元:花王㈱ スキンケアナビ
最も体の内側部分に位置している【皮下組織】の大部分は“脂肪”で形成されています。
美意識の高い皆さんならダイエットにもアンテナを張っておられるでしょうから“皮下脂肪”という言葉は聞いたことがあると思います。
“皮下脂肪”は『肥満』や『贅肉』などの良くないイメージが横行していますが、クッションの役割を果たし、外部からの衝撃を和らげたりしています。
また、暑いときには断熱、寒いときには保温の働きをし、体温を一定に保っています。
その“皮下脂肪”の中には、血管の“動脈”や“静脈”が通い、お肌へ栄養を届け、老廃物を運搬し、大忙しで活動しているのです。
特に手足の皮膚は他の部位と比べてとても薄く、表面温度が上がらなければピンポイントでその部位だけが氷のように冷えるという現象が起きます。
皮膚は3層から成り立つ臓器であり、各それぞれの層が健やかに働くことで、私たちの肌はしなやかで、みずみずしさを保っているのです。
皮膚が持つ働きについて
これまで、『そもそも皮膚とは何なのか?』という基本的な構造についてお話してきました。
『皮膚は一枚にしてならず!』
それぞれの層が明確な役割を持って活動していることがお分かり頂けたかと思います。
私たち人間は、この層が折り重なった皮膚一枚に、頭の先から爪の先まで包まれ、そして守られています。
体内で活発に細胞分裂を繰り返し日々生まれ変わるこの生命活動をしながら、生涯ずっと包み込んでくれているのです。
次の解説は、それぞれの各層がなぜそのような活動を行うのか、皮膚の生命活動とそれによる審美的な作用について、もっと深く掘り下げていきます。
①ターンオーバー
日々私たちの体は細胞分裂を繰り返しており、肌表面も同じく生まれ変わっていて、これを「ターンオーバー」と言います。
その速度は、約28日間が理想と言われおり、早すぎても遅すぎてもいけません。そして、この周期は部位や年齢によって異なることも覚えておきましょう。
具体的にはどんなことが起こっているのかというと、
基底細胞の分裂により新たな細胞が作られて、有棘細胞から顆粒細胞へどんどん形を変えながら約2週間で【角質層】にまで押し上げられます。
そこから、さらに【角質層】で約2週間留まり、皮膚を保護することだけに務め、その役目を終えると垢(あか)となって剥がれ落ちていきます。
この作用を“ターンオーバー”とよんでいます。
このターンオーバーによる古い細胞が剥がれ落ちる作用は、実はメラニンも同じです。
このロジックでは、メラノサイトで作られたメラニンは【角質層】へ移動すると最後は垢となって肌には残らないはずです。
では、なぜ肌に“しみ”はできてしまうのでしょうか。
実は、ほんのちょっとしたことでこの“ターンオーバー”はすぐに乱れてしまいます。
《ターンオーバーが乱れる理由》
ターンオーバーが乱れる理由の一つ、例えば、“年齢による乱れ”。
加齢とともに基底細胞自体が機能低下を起こし、どんどんスピードが遅くなるという現象が起こります。
一般的には、10代で約20日、20代で約28日、30代で約40日、60代ではなんと約90日までスピードダウンしてしまいます。※4引用元:HEALTHYA Webサイト
年齢を重ねると“しみ”や“しわ”が増える大きな要因のひとつです。次に“紫外線、肌荒れによる乱れ”。
紫外線を浴びて、皮膚がやけど状態になることを“サンバーン”と言います。
この“サンバーン”や肌荒れを起こしている状態では、受けているダメージを早く回復しようと“ターンオーバー”のサイクルは逆に早まります。
また、過度な洗顔やピーリングの使用でも早まる傾向にあります。
画像引用元:Chocola.com
この乱れこそがシミの原因となります。健康なお肌の状態、28日周期を守り続けることができるならば、メラノサイトで生成されたメラニンは垢となって排出されます。
しかし、浴びすぎた紫外線による影響で、排出しきれないほどのメラニン量だったり、周期が遅くなることにより表皮内に残り続け沈着される、この事象こそが“しみ”なのです。
《ターンオーバーが乱れるとどうなるの?》
前述のように【ターンオーバー】は、28日周期が理想と言われていますが、加齢によって遅くなったり、年齢に関係なく早くなったりと、正常に働かないときがあります。
これを『ターンオーバーの乱れ』と言います。
このターンオーバーの乱れが「シミ」の原因になる前述しましたが、他にも美肌のためには悪影響なことがあるんです。
“ターンオーバーが遅れると肌はどうなるの?”
基底層から押し上げられてきた古い細胞は、角層内でいつまでも剥がれ落ちずに詰まっている不健康な状態です。
肌はゴワつき、硬化し、肌自体が薄黒くくすんでいるように見えます。毛穴詰まりも起こしやすいため、吹き出物ができたり、色素沈着もしやすい肌環境になっています。
“ターンオーバーが早まると肌はどうなるの?”
まだ成熟しきっていない細胞が無理に押し出されてきているため、水分保持能力の低い細胞が浮き上がってきている状態です。
乾燥しているのが特徴で、バリア機能も整っていないので、環境によっては大きな肌トラブルになりやすいお肌です。
②バリア機能
人の肌自体が外気に触れる最も面積の大きな臓器であり、私たち自身を守ってくれていることはご理解いただけましたか?
【表皮】はたったの約0.2㎜と記述しましたが、その極薄の中で実は大切な機能が働いています。※コスメの教科書第2版 P056参照
ここからは、その機能についてのお話です。
一番外気に最も触れる【表皮】は、体内の水分量を一定に保っているほか、感染症等から守るためのバリア効果を常に発揮しています。
その秘密は角質層の中。角質層の中を少し覗いてみましょう。
最も表側に面する【角質層】の中に、天然の保湿因子【NMF】というアミノ酸でできた成分が含まれています。
この【NMF】は、水分をしっかり掴まえる働きと、掴まえた水分をギュッと抱え込む働きをしています。
保湿=水と考えがちですが、お肌は水だけを与えれば良いというものではありません。
例を挙げると、例えば水道水。これは紛れもなく“水(みず)”ですよね。
しかし、肌の上に乗せてもサラサラと流れ落ち、肌へ浸透している感触は一切感じ取ることはできないはず。“水”だけでは肌は『掴み取って』『抱え込む』ことができないからです。
そしてもうひとつ、【NMF】のほかに【細胞間脂質】という、角質層の細胞と細胞の間を接着する役割を果たす脂質の部分です。
主に、セラミドや脂肪酸で構成されており、規則正しくきちんと並び、水分と油分が何層にも重なり合って外的刺激要素から体内への侵入を防いでいます。これを【ラメラ構造】と言います。
画像引用元:Beauty Mission
最も表に面している【角質層】ではこの2つの防御機能が働き、私たちは健やかな肌状態を保つことができます。
そのほか、【有棘層】では【ランゲルハンス細胞】という外部からの細菌やウィルス、カビを分解する働きをしています。
さらに【基底層】の解説で詳しくお話した【メラノサイト】。
別名、“色素形成細胞”と言いますが、肌が紫外線などの刺激を感じるとメラニン生成の指令を送り、紫外線の有害物質が内部まで届かないよう働きかけています。
全ては私たちを守るために、片時も止まらずに働き続けてくれています。
③保水機能
皮膚が持つ大きな働きのひとつとして、自ら保水をする機能があります。
この機能は3つの潤いメカニズムがきちんと働いて、はじめて正しく効果を発揮します。その3つの機能について解説します。
肌表面には【皮脂膜】
【表皮】の最も外側は【角質層】であると前述しましたが、その角質層の上には、皮脂腺の分泌物“皮脂”と、汗腺の分泌物“汗”、自ら出てくる“垢”、さらには、もともと皮膚に存在している“常在菌”などからできた天然のうるおいヴェールが、肌表面に膜を作り肌表面からの水分蒸発を防いでいます。
バリア機能としては3つの機能の中でも高くないですが、皮脂がなければ肌はどんどん乾燥します。
また汗は、水分を保水するため、肌を潤った最適の状態にするためになくてはならない成分です。皮脂と汗はどちらも肌を柔らかくしっとりと保ち、保護作用を高めます。
さらに、人は生きている以上、実は数えきれないほどの“菌”とともに暮らしています。この“菌”とは、ばい菌のことではなく、私たちを守ってくれている“善玉菌”です。
この善玉菌は、皮脂を餌にしながら生きています。皮脂を食べた後、その皮脂を分解してくれます。
この作用のおかげで、お肌はたっぷりと潤い、表皮自体を守ってくれているのです。
以上の理由が、皮脂膜は“天然の保湿クリーム”と呼ばれる由来です。
角質層には【NMF】(天然保湿因子)
【NMF】とは“Natural Moisturizing Factor”の略です。
角質層の細胞内の“ケラチン”とともに存在し、空気中の水分や蒸発しようとする水分をしっかりと掴まえ、また掴まえた水分を逃がさない機能があります。
保水して逃さない、この優秀な機能で私たちのお肌はうるおいを保っています。
水と油の接着剤【細胞間脂質】
水と油は本来馴染まないものですが、2つともお肌にとって欠けてはならない大切なものです。
本来は馴染まない、その水と油、実は私たちのお肌の中でその両性質を馴染ませる機能が常に働いています。
まさに“水と油の接着剤”と言えましょう。
この接着剤構造は大変優秀で、その断面図はまるでミルフィーユのように水と油が美しく整列して折り重なっています。(ラメラ構造)
この水と油の強い壁で外界からの刺激から守り、水分を保持しています。
先ほどから、何度も何度も『うるおい』というワードが出てきていますが、自分の肌を守るためにまず必要なことは潤うことなのです。
潤うことで、体内の水分量を保持し、蒸発を防ぐ。皮膚本来が持つこのうるおいヴェールって、本当に神秘的な世界ですね。
美肌の条件《第五か条》
「あの人きれいだな」「透明感のある人だな」と感じる女性、最近とても増えたと思いませんか?
女優のように美人、だとか、高価なアイテムを身に着けているから、ではなくなんだかとっても気になる人。
通勤中の電車の中や休日のセレクトショップ、ふと見かけただけの人なのに、目に刻まれたかのような印象に残る理由。
そのわけは、透き通るような強く美しいお肌が理由のひとつであるはずです。そんな美肌の条件5ヵ条をご紹介しましょう。
第一ヵ条:艶のある潤った肌
肌に触れたときにしっとりとした潤い感があり、みずみずしい感触があります。水分と油分のバランスが取れているため、見た目にも艶が見えます。
第二ヵ条:ピンッと張ったたるみのない肌
触れるとはね返すような張った感覚を得られます。ひと目で若々しいエネルギッシュな印象を与えます。
第三ヵ条:均一感のある凸凹のない肌
いわゆる“キメ”が整っており、細かい網目状で大きさがそろっているとつるんっとなめらかに見えます。触り心地はザラつかず、ゴワつかず、毛穴も目立っていない肌です。
第四ヵ条:ぷるんっとした弾力のある肌
ふわふわクッションのような指で押すと押し返す力強さのある肌。笑顔や泣き顔など、様々な表情が繰り返されても伸縮性があり、皺になりにくい肌状態のことです。
第五ヵ条:透明感があり血色のよい肌
肌の色はほどよくピンクがかっていて、健康的な肌に見えます。良好な血液の巡りが透けて見え、明るく透明感があります。
昔から伝えられている言葉で『色の白いは七難隠す』と言われていますが、本当の美肌とはやはり“艶”と“透明感”に尽きるでしょう(もちろん生まれ持っての色白肌さんであれば最強です!)
『お肌綺麗ですね』と思われる秘訣は、この五ヵ条が大きなポイントなのです。
肌構造を学ぶ参考になる本
筆者がコスメコンシェルジュになるため、肌構造を学ぶために教科書として学び続けた本。それは【日本化粧品検定2級・3級テキスト(コスメの教科書 第2版)】でした。
筆者自宅です(笑)もう一度読み返して、おさらいをしているつもりで執筆活動をしています。間違った情報をお伝えしてしまってはいけませんので…(苦笑)
それでは、ほんの少しだけ中をご紹介!
ご覧いただいたように“テキスト”と言ってもイラストが入っていたり、読みやすい丸ゴシックだったり、化粧品について詳しくない方でも楽しく学べます。
『日本化粧品検定 2級・3級対策テキスト』
- 価 格:1,836円(税込)
- 出版社:主婦の友社
- 発売日:2016年3月24日
まとめ
今回は、お肌の構造や働きについて解説してきました。
ひと言で“肌”と言っても、それは何重にも折り重なった層や細胞から成っており、それぞれの役割を果たすためだけに活動しています。
私たち生命体はロボットではなく生きた生身の人間です。
体調に変化があったり、精神的な作用で見た目が変わったり、感情の起伏があったり、毎日食べるものも異なります。
個体の私たちが知らず知らずの間に細胞を駆使したとしても、体内ミクロの世界では常に私たちを守り続けてくれています。
そう考えるともっと大切に、もっと労わってあげたいと思いませんか?
この記事が美しくなりたいと願う全ての女性のために役立つことを願います。